テレビ局で営業や記者を経験し、未経験からWebディレクターへ。いまはONでアートディレクターとして活躍するYUKAKO.K。振り返れば挑戦の連続だが、その根底にはいつも「ものづくり」への思いがあった。営業、報道、Web、広告――異なるフィールドを歩んできたキャリアは、一見バラバラに見えて一本の線でつながっている。

テレビ局からWebの世界へ──異色キャリアの原点

社会人としてのキャリアは、地元・テレビ局から始まった。大学時代には演劇に打ち込み仲間とともに作品を作り上げて観客に届ける楽しさを知った。その経験から、生の情報を多くの視聴者に届けるテレビの世界にも興味を持って就職活動をし、入社後は営業の席に座った。

「大学の頃は、声や話し方を褒めてもらえることが多くて、一瞬アナウンサーの道も考えたんですけど。就職活動を続けるうちに、CMを作ったり、制作側の仕事をしたいという気持ちが強くなっていきました」

営業を3年間務めたのち、人事異動で報道制作部へ。報道記者としてニュースの台風取材やインタビューに携わるようになり、現場の緊張感を肌で味わった。

「報道の現場に立つと“ミスは許されない”という独特の緊張感がありました。原稿の表現を一言でも間違えれば、多くの人に誤った情報を伝えてしまう。そして原稿が遅れると番組の時間に間に合わず視聴者にニュースを届けることができない。若いうちにそうした現場を体験できたのは、今につながる財産だと思っています」

ただ、その緊張感に満ちた環境は、次のキャリアを考える契機にもなった。2020年、コロナ禍の中で、彼女は転職を決意。そんな中選んだのは、勝手もわからない「Webディレクター」という道だった。

「本当に“サーバーって何?”っていうレベルからのスタートでした(笑)。Webサイトがどう表示されるのかすらわからなくて。でも独学したり、先輩に助けてもらったりして。最初は営業的なやり取りが中心でしたけど、半年くらいでやっと一人でディレクションできるようになったんです」

地元を離れ、大学時代を過ごした東京で再び働く選択をしたのも自然な流れだった。

「東京には友人も多かったですし、時代の流れをキャッチしやすい東京で新しい挑戦をしたい”という気持ちがありましたね」

「任される」から「動かす」へ──ONで芽生えた当事者意識

その後2022年に、YUKAKOはONにジョインする。最初の配属先は大手証券会社での運用系ディレクションの現場だった。高い正確性とスピードが求められる環境で、その緊張感は記者時代を思い出させるものだった。

「入社してすぐに現場に出てくださいって言われたんです。前職での経験を評価してもらったんだと思います。金融業界のWEBサイトは多くのユーザーに影響が出る分、判断を間違えられない。報道記者のときと同じで、手が震えるような場面もありました」

これまでのクライアントワークとは違い、プロジェクト先の同僚と同じ立場で働くのは初めての経験だった。

「“クライアントのために作る”というより、“自分たちの会社をどう良くするか”を考える。最終判断を相手に委ねるのではなく、私自身が判断して決定していくという立場で働くのは大きな学びでした」

ONのサポート体制も心強かった。ハードな現場もぐっと減り、メリハリある働き方を通して、仕事と生活のバランスを取る感覚も身につけていった。

「残業が多いときはONのプロジェクト担当が調整してくれて、自分では言いにくいこともちゃんと伝えてくれる。相談しやすい人ばかりなので、本当にありがたいです」

「人生で今が一番若い」これからも挑戦を続ける理由

現在、YUKAKOはマンガアプリのプロジェクトに参加し、アートディレクターとしてプロモーションに携わっている。作品をどう読者に届けるかを考え、ビジュアルやコピーを提案するのが役割だ。

「漫画を読んで“この作品ならこういう色味やコピーが響くんじゃないか”と考え、デザイナーさんに形にしてもらうんです。特に女性向けラブコメは自分自身が読者でもあるので、“こういうコマを使ったら読みたくなる”って感覚をそのまま仕事に活かせるのが楽しいですね」

表現に制約のある環境で工夫するのも醍醐味の一つだ。

「制限がある中で最大限“どう伝えるか”を考えるのが楽しい。読者の反響を振り返って、携わった作品の読者数の数値が大きく伸びていたときは本当に嬉しいです。逆に、自分が面白いと思って作ったものが刺さらなかったときはすごく悔しい。だからこそ、次につなげたいと思えるんです」

振り返ると、営業、報道、Web、広告と多様な経験を重ねてきたが、そこには一貫した軸がある。

「昔から“ものづくり”が好きなんです。演劇、写真、動画から、テレビのCMやニュース、Webサイト、広告……形は違っても“人に届けるものを作る”という思いはずっと変わっていないですね」

今後については、アートディレクターとしてさらなる成長を目指している。

「以前はデザイナーになりたいと思ったこともありましたけど、今は“どう宣伝していくか”を極めたい気持ちが強いです。将来はプロジェクトマネージャーのような立場にも挑戦したいですね」

プライベートでも歩幅を少しずつ広げている。今年は体力不足を感じてジムに通い始め、休日には関東の山に毎月登っている。山の稜線を歩きながら呼吸を整え、次の一歩を置いていく感覚は、仕事と重なる部分がある。

「山って、急に傾斜が変わって“ここからが本番”ってなる瞬間があるじゃないですか。仕事も似ていて、しんどい手前で諦めないで越えた先に景色が開ける感じが好きなんです。月一ペースで山に行ったりして、体力づくりも兼ねて続けています」

そして最後に、ONに興味を持ち、これから挑戦しようとする人への言葉を口にした。

「“これからの人生で今が一番若い”っていう、好きな言葉があるんです。年齢を重ねて、キャリアが積まれていくと、やることを絞りがちなだけに、新しいことをしたいという気持ちがあるなら、今すぐはじめるべきだ……っていう。『もう今すぐはじめないとこの先の人生変えられない!』っていう気持ちで、一歩踏み出してほしいですね」