建設現場、SES企業での無人コンビニやコールセンターなどの運用を経て、独学でデザインとコーディングを学び直し、ONへ。異なる業界を経験してきたNAOYA.Hは、いまや大手証券会社で、チームマネジメントや意思決定にも関わるようになる。稀とも言える「ディレクターからコンサル」への越境は、現場で積み上げた信頼と、ONの伴走が後押しした。転職を繰り返すことは、決してネガティブじゃない。彼のストーリーを追うと、必ずそう確信することだろう。

建設現場での“板挟み”で得たタフネス

机上の学びより、まずは現場だった。大学では情報科学を専攻し、ゲームやコーディングに惹かれていたが、最初に足を踏み入れたのは全く異なる建設業界。それも、配属は「やりたいと思っていた」図面作成ではなく、いきなりの現場だった。当時のことを苦笑い混じりに振り返る。

「まさか自分が建設の現場に行くとは思ってなくて。朝7時半の朝礼からスタートし、夜は職人さんが引く22時すぎまで未経験ながら対応する日々でした……あの時が一番きつかったですね」

次に選んだのはSES企業。だが業界も未経験ゆえに制作には関わらず、無人コンビニのバックヤード、コールセンター、書類のキャプチャ作業など“縁の下”の仕事を転々とした。制作の華やかさとは別の場所で、仕事の土台がどのように支えられているかを身体で覚えた。

「本当は制作に関わりたかったけど、現場では“まず回す”ことが最優先。だからこそ、更新や監視の重要さがわかった気がします」

回り道ののち、独学とスクールでデザイン、コーディングを学び直し、ONへ応募。決め手は人と空気感だった。大きすぎない組織、最先端を追う姿勢、そして個性的な人たち。「面談の印象で、ここなら挑戦できる」と思えたという。

「年末に別の内定を受諾していて、『ああ、ONはダメだったんだ』と思っていたら、年明けに内定の連絡が来て。悩んだけど、第一志望だったのでここに決めました」

ONでの挑戦と成長 補佐から「任されるディレクター」へ

入社直後、NAOYAは証券会社のWEB制作現場に配属し、シニアのサポートを任された。雑務に近いタスクから始まったが、半年経ったころ大きな転機が訪れる。

「そのサポートしていた上長が産休に入ることになったんです。それも、新メディア立ち上げのリリースが1か月後に迫っていて、『ディレクションを誰がやるんだ』となり、部下だった自分が担当することに。何もわからないままやるしかなくて、毎日夜遅くまで各関係者と連絡を取りながら、なんとかリリースにこぎつけました。あの1か月はかなり厳しい日々でしたけど、経験値は相当得られましたね」

上長が復帰し、改めてサポート側に回ったが、転機はまた訪れる。NISA制度に伴うサイトリリースを控えた時、その上長が退職することが決まったのだ。審査対応や調整がふたたび押し寄せたが、主軸となるメンバーが不在のチームを実質的に取りまとめることになり、信頼を得ていく。

「誰もやらないなら、自分がやるしかない。ロードマップや優先度、リスクの整理……やること、やらないことを決めて、現場を回す機会が増えました」

ONの伴走も大きい。負荷が高い時期はプロジェクト担当が先方と調整に入り、逆に挑戦の機会には背中を押してくれる。その土台があるから、“越境”もできた。

「自分だけでは言いにくいことも、ONのプロジェクト担当が代わりに言ってくれる。安心して“やるべきこと”に集中できるのがありがたいです」

ディレクションとコンサルの“二刀流” モデルケースのない道を行く

現在NAOYAは、ディレクターとコンサルティングを兼任する。要件の前段では課題を定義し、周囲に言語化する。制作工程では段取りと品質を担保しつつ、施策の優先順位やリスクを整理する。そんな八面六臂の動きぶりに、現場からの評価も高い。

「ディレクターもコンサルも、特定業界だけのスキルじゃない。相手をどう説得するか、どうロジカルに考えるか。普遍的な力が鍛えられて、仕事以外の視野も広がりました」

チームには新人も加わり、立ち回りや段取りのレクチャーを担う場面も増えた。一方で、これからの進路は「迷っている最中」だという。ディレクターに専念する道も、コンサルへ振り切る道もある。興味のある領域は、原点のゲームやエンタメだが、まずはWeb制作の知見をさらに深めるつもりだ。

「案件ではスパッと決められるのに、キャリアの意思決定は難しいですね(笑)。でも、どちらの道でも価値が出せるように、AIやFigmaなどの最先端分野は学び続けています」

仕事の外では、体を動かす時間を意識的に増やしている。ジムに通い、週末は自転車で汗をかく。先回りして整える体力は、現場での粘り強さにもつながる。

「飽き性だと思っていたけれど、仕事で“任されたらやり切る”ことが増えて、『根性があるね』と周りが言ってくれるようになりました」

最後に、これからONに挑戦する人へ贈る言葉がある。

「最初から『自分はこの分野をやる』とガチガチに決めすぎない方がいいと思います。違うなと思ったら選び直せるように、選択肢は残しておく。そのうえで現場で信頼を積むのが大事かなと」

未来はまだ描き切れていない。だが、モデルケースがないからこそ、足元で仕様を決め、ルートを引いていく。その繰り返しが、唯一無二の道になる。