チャンスは、いつも準備の先にある。
はじめから「これがやりたい」と言い切れる人ばかりではない。キャリアの途中で迷ったり、理想と現実のギャップに悩んだりするなかで、「今よりもう少し先へ進みたい」という思いが、少しずつ自分の輪郭を形づくっていく。

そうして掴んだチャンスのひとつひとつが、経験となり、次の一歩を後押ししてくれる。KAORI.Nもまた、そんなプロセスを歩んできた。転職を重ねながら、ONでのプロジェクトを経験しながら、現場での実践を通じて自分の道を切り開いてきたのだ。

毎日3〜4時間睡眠の職場も…現場で揉まれた20代

これまで、いくつもの環境に揉まれながらキャリアを築いてきた。最初から明確なゴールがあったわけではない。ただ、そのときどきで「面白そう」と思ったものに飛び込み、現場で汗をかきながら、ひとつずつ経験を積み重ねてきた。そんなKAORIの言葉は、やはり説得力がある。

「これまでのキャリアが、今につながっている実感はすごくあるんです。正直、当時は“これを将来につなげよう”なんて意識はなかったんですけど(笑)」

 キャリアのスタートはテレビ局。スポーツ専門チャンネルで、CMの放送データを作る業務を担当していた。

「もともとは映画業界に行きたかったんですけど、縁あってテレビの世界に入りました。最初は全然わからないことだらけ。でも現場で覚えていくうちに、もっと広い世界を見てみたくなったんですよね。毎日同じ人と顔を合わせて、同じことを繰り返す日々に、なんだか物足りなさを感じてしまって」

そうして次に選んだのは、大手検索・予約サービスの営業職だった。設定する目標が高い企業で、未経験ながらも飛び込み、彼女は幾多のハードな経験をすることになる。

「営業が最初だったんですが、途中から美容サロンの検索・予約サービスの原稿制作チームに異動して、店舗ごとに記事を書く仕事になりました。激戦区を担当するようになってからは、毎日3〜4時間睡眠、朝から晩までずっと原稿とにらめっこして、トイレに行く暇もない日々……(苦笑)。でもその分、スケジュール管理や逆算する力はすごく鍛えられました」

3年半の契約の中で、リーダー業務も経験。チームのスケジュールも全て見るようになってからは、さらに緊張感が増す日々だった。

「“誰かが1本でも原稿を落としたら……”というプレッシャーが大きかったですね。それがずっと続いていて、正直いつか壊れてしまうかもって思ったこともあります。だからこそ、精神的にも体力的にもタフになれたと思うのですが」

予想外の「ディレクター職」との出会い

次に転職したのは、小規模なブランディング会社。ライティングの技術が活かせるということで入社したが……。

「スタッフがどんどん辞めていって、気づけば東京の拠点に私とデザイナーと2人だけのチームになったんです(笑)。パンフレットやウェブサイト、動画制作まで全部担当することになりました。ディレクションの経験なんてなかったけど、誰もやる人がいないから、“じゃあ私がやるしかない”って」

徐々にWordPressの操作や投稿などにも関わるようになり、業務の幅が広がっていく。気づけば、学校のパンフレットや企業のチラシ、ホームページ、横断幕、動画制作まで、多岐にわたる案件のディレクションを担う立場になっていた。

「正直、最初はやり方がまったく分からなくて。パンフレットってどうやって作るの?というレベルからのスタートでした。大阪のスタッフに電話で聞きながら、ひとつひとつ進めていった感じです」

試行錯誤の末、一通りのプロジェクトをまわせるようになったが、毎年同じ流れで仕事をこなしていくだけの日々に、このままでは自分が成長ができないのではと不安を覚えるようになった。

「仕事をこなすことに精一杯で、本当はもっと企業のことを考えてこだわるべきなのに、その知識も余裕もなくて….。自分流のやり方でなんとか仕事をこなしていたので、『私はディレクターを名乗って良いのだろうか』『他社で通用するほどの知識や技量があるのだろうか』と思うようになりました。年齢的にもディレクターと名乗るに恥ずかしくない実績や経験が欲しいと思うようになり、転職を決めました」

この環境の中で“何でもできる自分”になりたい

転職活動を進めるなかで、KAORIはONと出会う。転職サイトで偶然見つけた企業だったが、求人に書かれた「未経験でも挑戦できる」「年齢を問わず学べる環境」というワードに心を惹かれた。

「実は他にも何社か受けていたんですが、ディレクターとして入ったらディレクターしかやらせてもらえない会社が多くて……。私、デザイナーとしては全然使えるレベルじゃないし、独学で頑張っても限界があるなと思ってたんです。だからONの求人を見たとき、『ここならいろいろ教えてもらえそう』『挑戦してみたいことにも手を伸ばせそう』って感じたんです」

最初に配属された広告代理店のプロジェクトでは、GoogleやYahoo!の広告に関わる最前線の知見を得ることができた。

「最初は飛び交う用語が全然わからなくて、みんな何を言ってるんだろうって感じでした(笑)。でも全部メモして、ひとつずつ調べて、繰り返すうちにだんだん理解できるようになって。そこで学んだことが、今すごく活きています」

その現場では、コンペに参加し、スピーカー役も任されるなど、多くの裁量を与えられた。現在では、広告制作の“上流工程”に関わるプロジェクトで、企画や構成のフェーズから関与している。

「以前は、設計図をもとに動かすような仕事が多かったんですが、今はその設計図を描くところから関われている感覚があります。自分の提案がそのまま広告に反映されて、それが世に出ると、やっぱり達成感がありますね」

大手広告代理店との共同プロジェクトや、多くの関係者を巻き込んだ進行管理など、大きな組織を相手に動く難しさとやりがいを実感している。「本当にディレクターと名乗っていいのか」と悩んだ日々は過去のこと。いまはその肩書きに、ようやく手応えを感じられるようになった。

「いまの目標としては、“自分の手でも表現したい”という気持ちが強くなっていて、簡単なデザインぐらいはできるようになりたい。まあ……なんでもできる人になりたいんですよね」

と、はにかむ。現在も仕事終わりの時間を使って、PhotoshopやIllustratorの勉強を少しずつ進めている。そしていま、かつての自分と同じように「挑戦したい」と思っている誰かに、こんなメッセージを贈る。

「最初から全部できる人なんていないと思うんです。でも、やってみたいって思った気持ちさえあれば、ONはちゃんと向き合ってくれる場所。だから“私なんかが”って思わずに、一歩踏み出してみてほしいです」

ディレクターとして、プレイヤーとして、そして「なんでもできる人」を目指して。KAORIの挑戦は、まだまだ続いていく。