「キャリアチェンジ」という言葉が一般的になった現代において、異なる職種への挑戦は決して珍しいものではない。しかし、それが「エンジニアからディレクターへ」という道となると話は別だ。

高度な専門スキルを駆使して個々の課題に向き合うエンジニアリングの世界と、全体を見渡しながらチームを動かすディレクションの世界。一見相反するように見える両者を繋ぐ糸は何か。その過程でどんな景色が広がっているのか。今回は、まさにこの二つのフィールドを渡り歩いてきたHIKARI.Kの道のりをひもといていく。

新卒から7年間アパレル業界に勤務

大学卒業後のビジョンは明確だった。だがそれは、今IT業務に携わる彼女の現状とは全く異なっていた。

「新卒での就活では、『人をお祝いしたい』というか、他人の人生の節目節目に関われるような業種が良いなと思っていました。その後採用していただいた会社というのが、レディースのフォーマルウェアを取り扱ってるところで、『私が目指してたような業界』だと喜んで入りました。配属された場所はシステム部、いわゆる社内の業務に携わるプログラムの改修、パソコン機器類のセッティングが中心だったんですね。高校のときにそうしたことを若干学んでいたこともあったので、あまり抵抗はなく、いろいろな経験ができるのかなと思って入りました。ただ……」

ここで彼女が言い淀んだのにはわけがある。就職、転職を経験、いやアルバイトをしてきた人でも一度ではありそうな“あるある”だ。

「実際やってみて『自分には向いてないんじゃないかな……』と思ったんです。悩みながら工夫して、頑張ってやってはいたんですけど、理路整然とわかりやすく作らなきゃいけないという工程が私にとっては苦手に感じました。とは言いつつも、先輩や上司など人間関係には恵まれて、7年在籍していました」

これまでのインタビューでは、その後いくつかの企業を経てONにジョインするというケースが多かった。HIKARIの場合は、その後すぐにONを選んでいる。アパレル業界からWeb業界への転職、一体どういうきっかけがあったのだろうか。

「そもそも転職しようと思ったきっかけっていうのが、一時システム部からの異動でEC関連の方に携わる機会があって、素直に『楽しいな』って思ったんです。ECサイトのページを作ったり、販促を仕掛けたり、数字で結果が得られるっていったところにちょっと面白さを感じて、Web業界に行ってみるのもいいかなっていうので、転職活動をはじめました。ONは何で知ったのか正直あやふやなんですが(笑)、所属するメンバーに対する支援の手厚さ、ひいては日本のクリエイターたちを大事にしていきたいんだっていう熱い思いが面接で話す中で伝わってきて、『ぜひお願いします』という形で入りました」

何もかも違う景色だった「アプリプランナー」の世界

1つ目、2つ目のプロジェクトでは、COBOLのエンジニア、管理ツール支援業務など、前職の経験を活かした業務に従事した。

「前職で販売員さん向けに端末の説明会などを行っていた関係から、クラウドサービスを使用する企業さんで、運用ルールですとか使い方の説明会などを行っていました。会社規模が違うことから十分に新しい気づきが得られて、プロジェクトの延長を打診されたんですが『次のステップに進むべきだな』と、別の道へ行きたい旨を伝えさせてもらいました」

そして3つ目のプロジェクトというのが、「アプリのプランナー」という、彼女がこれまで携わったことのない未知の業種だ。

「昨年の2〜3月からジョインして、まもなく1年を迎えます。正直最初の方はダメダメで、働き方の違いもあったし、いきなり違う会社から来た人がまとめるっていうことで、メンバーとのコミュニケーションが難しく、いろいろフォローしていただきました。私の性格も理由に入ってくるんですけど、壁に当たったとき足が止まっちゃうところがあるので、その時は多方面に迷惑をかけたなと……」

そんなハードシングスを経験しつつも「今は割と充実してる感じがある」とHIKARIははっきりと口にする。

「すごく些細なことですけど、アプリが無事ローンチされた瞬間は自分から『やってみたい』と口に出して良かったなと思える瞬間です。もっと爪痕を残そうとやる気も出てきて、いま新サービスを提案するために、たたき台を作っているところです」

今では「マルチに活躍できる人材」に憧れ

今後、自分がどういった人物像になっていきたいかと訪ねたところ「働き出した当初は特定の分野を突き詰めて、専門的に活躍できる人材になればという気持ちだったんですけど、いろいろなことを経験していくうちにマルチに活躍できる人材になりたいという気分になっています」と語る。その思いの推進力となっているのが、ONの環境だ。

「人には向き不向きがあって、『さあやるぞ』とせっかく意気込んでもつまづくことがあると思うんです。ましてや、転職してそれが起こってしまうと、なかなか次に進むのも難しいですよね。そういった意味では、ONのようなプロジェクトベースの働き方は理にかなっていると思いますし、キャリア担当の方も悩みがあったとき親身になって話を聞いて動いてくれる。ありがたいことだと思います」

ここ最近は「ライフワークバランス」も整い、以前は仕事に忙殺されてできていなかったことも実現できている。

「そうですね……最近は“部屋を整える”っていうことができていて、人を呼べるぐらいには綺麗にできています(笑)。それだけ心が安定しているっていうことなんでしょうけど。あと、私はライブに行くことや観劇が趣味なんですが、今週末もファンであるBUMP OF CHICKENのライブを観に行きます」

 これからもONに興味を持った人たちが応募してくることだろう。いま自己実現を図っている途中のHIKARIが伝えられることとは。

「好奇心が旺盛だけど、『通用するかな』とか、不安で一歩踏み出せない人って結構いるのかなと思っていて。だけど、結局は動かないと何もはじまらないですよね。大小のこだわりは捨てて、ひとまず飛び込んでくれば思い描いていたことが実現できる場所だと思うので、フランクな気持ちで来てほしいと思います」