社会人としてのキャリアを積み重ねたあと、新しい道へ飛び込むのは勇気がいる。特に「未経験」や「30代からの転職」といった言葉がプレッシャーになることもあるだろう。

だが、今日紹介するのは、まさにその壁を乗り越え、自らの手で新しい未来を切り拓いた一人のWebデザイナー・YUKA.Tの物語だ。気づけば「これだ」と思える仕事に出会った彼女の道のりは、Web業界未経験からの活躍を夢見る人の背中を後押しすることだろう。

北海道から、突如思い立ち東京へ

「未経験からWebデザイナーになって活躍」などと文字では説明していても、普段からPCを触っていて、スキル上達の素養があった……そんなインタビューケースはよくある話だ。だが、今回話を聞いたYUKAは、社会人になってもPCを扱うどころか、Web業界とはほど遠い場所に長らく身を置いていた。

「私、そもそもメイクアップアーティストになりたくて専門学校に通っていたんです。でも卒業してからは百貨店でお菓子の販売アルバイト、その後はワーホリで1年ぐらいカナダに行ってました。帰国してからはエステで施術とかしてたり、接客業が長かったですね。パソコンなんて全然ですよ。キーを打ち込むのも苦労していたぐらいですから」

と、笑いながら話す。転機が訪れたのは、その後事務の仕事に就いてからのことだ。

「自分のキャラクター的にも接客は合っていて楽しくやれてはいたんですけど、お客さんの相手プラス、所属する会社の人ともコミュニケーションしなきゃいけないじゃないですか。それにちょっと疲れてしまって、次は内勤にしたいなと思ったんですよね。本当、パソコンは全くいじってこなかったんですけど、段々と『パソコンって楽しいな』となってきて……」

ここでさらにYUKAをWeb業界に後押しする事態が起こる。上司から、無茶ぶりでコードを使った作業を依頼されたのだ。

「そんなの初心者の私には無理じゃないですか。だけどやらなきゃいけないから、頑張ってHTMLの仕組みをネットで見たりして、どんどん実用的な作業をやるようになっていきました。大体そのタイミングですかね、『よし、東京に行こう!』と思ったのは。環境を変えて、Webに関する仕事をもっとやりたかったんです。自らの手を動かしてモノを作る機会をもっと増やそうって」

タフなプロジェクト先も経験

このとき年齢は30歳中盤に差し掛かり、とくにスキルに自信があるわけでもなかった。だが「とりあえず行けばなんとかなる」という、持ち前の行動力で札幌から上京。YUKAの「新章」がスタートする。

「勢いで来たものの、未経験のようなものだったから、数カ月は転職が決まりませんでした。まあそれはそれで別のことをしてお金を貯めて、ヨーロッパにでも旅行に行こうかななんて、楽観的に考えていました(笑)。そんなときにONのことを知ったんです。『未経験OK』と採用サイトに書いている会社はほかにもあったんですが、面接で話を聞いていて『私でも本当に大丈夫なんじゃないか……』って思えたんです」

 上京する前に1年ほどコーディングの勉強はしていたものの、実務経験はなく、さらには右も左もわからない東京生活。やはり最初はワークライフバランスなどを調整する暇もなかったようだ。

「はじめてのプロジェクト先が少人数でファミリー感のある会社で、しっかり根幹事業の仕事を任されることになって、ガッツリコーディングを任されました。同じ立場の人がいないからやることも多く、結構ハードな環境でした」

 そんなタフなプロジェクト先をいくつか経験し、コーディングのスキルも徐々にアップ。様々な企業からの依頼をこなしていくうちに、タイムマネジメントもできるようになり、信頼も得ていく。

「言われたことに対してバタバタしていたのが、段々と余裕を持ってできるようになって、心機一転で違うことをやりたくなったんですよね。そこでONのプロジェクト担当から提案してもらったのが、現在も在籍しているテレビ業界のWebデザイナー職でした。コロナ中だったので、対面でコミュニケーションも取れないから、わからないところがあったら率先して聞くようにしましたね」

年齢は言い訳にしない。すべては本人のやる気、行動次第

Webデザインに関しての知識は乏しいかもしれない。だが、数々の職歴で培われたコミュニケーション力は、YUKAを結果として助けることになる。

「納期が短くて常にバタバタしている環境なんですけど、本当にデザイナーチームが良い人たちばかりで、フォロー体制もあるし、尊敬もできるし……もう5年ぐらいになりますが、『充実した働き方ができている』って心から言えます」

周囲とも打ち解け、戦力になっている彼女に今後の展望を聞いた。

「まだこの環境で頑張りたいし、新しいことを覚えたいっていう気持ちですね。いまのプロジェクト先で『尊敬する人が近くにいる』ことが、仕事のモチベーションになるんだなって気づいたんです。基本は遊んでいたい人間ではあるんですけど(笑)、やるべきことと休むところ、そのメリハリが付けられているので、今後もそれを続けられたらなと。また何か気になる仕事があれば、飛びついていくんじゃないですかね」

様々な企業を経て巡り会えた「運命」とも言えるプロジェクト先。ただ、それまで歩んできた時間、場所も決して無駄ではなかったと振り返る。

「いろんなプロジェクト先を経験できたのは、いま思えば良かったですね。正直その当時は大変なこともありましたけど、ONのプロジェクト担当の人がスキルのなかった私でもできるプロジェクトを探してくれた結果だと思うし、短い間で濃い経験が積めたわけですから感謝しています。あと、ONのキャリアサポートの人たちは土日でも私が『ここわからないんですけど……』って聞いても教えてくれて、そういった教育体制も素晴らしかったです」

最後に、YUKAのように、異業種からまったくの未経験でWeb業界に飛び込もうとしている人たちにエールをもらった。

「年齢を理由にネガティブなことを考える人も多いと思うんですけど、私も30歳中盤からはじめているし、よっぽどじゃないと無理なことってないと思ってるんですよね。あとは本人のやる気、行動次第ですべてが決まると思っています……こんなことをいま言えるのも、いろいろ経験できたからなので、ぜひ恐れず飛び込んできてほしいですね」