「四十にして惑わず」という孔子の言葉がある。まさにそのままの意味で、人間は、四十歳にもなれば、惑うことがなくなるものだというものだ。裏を返せば、そこに至るまで「迷いまくっている」というのが通常ということだ。
ONメンバーでWebデザイナーのMIKIは、大学卒業後も、そして就職して数年後も「やりたいこと」が曖昧だったという。自分は何がしたいのか、社会においてどんな立ち位置を掴んでいきたいのか……そんな逡巡を繰り返した結果「デザイナー」という文字が見えてきた。イチから作り上げたキャリアは、ONに入ることで叶えることができた。
キャリアスタートは「とりあえず社会人になる」
彼女の大学生活はそれなりに充実していた。だが、卒業したあとのプランはぼんやりとしていた。「とりあえず新卒で働く」それぐらいの感覚だった。
「大学の時は、とくに何も興味が特になかったんですよね。服が好きだったからアパレル企業を受けてみるとかそんなレベルだったんですけど、ある日ゼミの先生に『IT系がいいんじゃない?』って言われて、じゃあIT企業を受けてみるかとなり、ひとまず入ることにしました」
新卒内定をもらい入った会社では、システムエラーが起きたときにベンダーとやり取りしたり、社内外で問い合わせに対応したりするなど、ヘルプデスクの業務を担当。実質3年半在籍したが、「デザイナー」という職業に興味を持ったのは3年目にさしかかる頃だった。
「3年で結構周りが転職とか考え始めたりしていて、『自分もこのままで良いのかな』って思ってきたんですよね。別に仕事自体はしんどいとかなかったんですが、『自分がしたい仕事ではないな』という気持ちが出てきたというか……そんなとき、前からデザインを見るのが好きだったので、気になってデザインスクールに通い始めました」
仕事の合間を縫ってオン・オフラインでデザインの基礎を学ぶ日々がスタート。もちろんプライベートの時間は削られるが、それでも「充実」を覚える毎日だった。
「デザインすることが楽しいって思いましたし、せっかくお金を払ったんだから、習ったことを無駄にしたくない、活かしていきたいっていう気持ちも芽生えてきて、『ちゃんとデザイナーを目指そう』って意識になりました」
「デザイナー未経験」の壁は厚かった
社会人から目指し始めたデザイナーとしての職。自分がやりたいことであれば、最初は給料が減ってもいい。そんな青写真を描いていた……だが、そう甘くはなかった。
「もう本当に、面接も落ちまくりましたし、書類でも通らないところが多かったですね。自分のホームページを作って、ポートフォリオなんかも見せたんですが……落ち込みましたし、途中で諦めかけたときもありました。やっぱり未経験って相当なハードルになっているんだなって」
自然とMIKIの転職活動は「未経験OK」の採用募集を探すことになる。ONに出会ったのはその頃だ。
「未経験OKのところは結構あったんですけど、ONは他のところに比べて自社サイトがクリエイティブで『カッコいい!』となったんですよね。こんな会社でも経験がない人を受け入れてくれるんだと思って応募することにしました」
スクールで学んだ基礎、ONの教育制度を経て、晴れてプロジェクトが決まる。しかしここからさらに紆余曲折が待っている。
「以前いた会社と同じ業務を7ヶ月ぐらいやってましたね。頃合いを見計らってデザイン業務を任せてくれるっていう流れだったんですけど、プロジェクト先の上司の人が転職するってなって、私に教える人がいなくなるから、普通にプロジェクトも終わっちゃうんですよ(笑)」
ふたたび大海原に投げ出されてしまう形になってしまったが、そこで助けになったのはONのキャリア担当だ。
「キャリアサポート担当の方がめっちゃ頑張ってくれて、デザイナーとしての業務ができるところを一生懸命探してくれました。アドバイスももらってポートフォリオも充実させて、面接対策とかも一緒に夜中までやってくれて……それが実を結んだと思うんですが、以前ONの別のデザイナーがジョインしていた制作会社のプロジェクトに入ることができたんです」
「私、根性だけはあるんですよ」
晴れてはじまった「デザイナー」としての人生。ここまで読んでくれた方であれば「スタートダッシュは大成功!」とは思わないだろう。
「最初はもう普通にしんどすぎましたね(笑)。前のデザイナーの人と被らずに入ってしまったので、引き継ぎも特になく、まとめてもらった資料を読むだけ。未経験だし、私が担当してるサイトは私だけが担当してるので、毎日22時ぐらいまで作業を続けていました」
弱音を吐くほうが簡単な状況は3〜4ヶ月続く。だがそれでも折れなかった。すでに「デザイナーとしてやっていく」という腹づもりがあったからだ。
「私、根性だけはあるんですよ(笑)。そこは強みだと思います。いま一年経つんですが、まだまだとは思いつつも、成長できてるなっていう実感があるので引き続き頑張りたいです。自分の担当したデザインがお客様から褒められたりすることもあって、そんなときは『この仕事をやってて良かった』って思います」
スピード感の上がったいまは、趣味のライブ鑑賞にも行けるようになった。先の目標は決めず、目の前のことに集中して、クオリティ&スピードの両立を目指していく。
「本当、取材用とかじゃなく、ONじゃなかったらデザイナーになれてなかったと思うんです。実用的なデザインを教えてくれるメンターもいたし、キャリア担当の方も親身になって応援してくれたし、良いサポートがあったおかげで、今があると思っています。これからは、私がめっちゃ頑張って立派なところを見せないと、ですね」