キャリアは一直線じゃない。AYUMI.Wは、そう信じている。PRで企画を考え、メディアと向き合い、そこで芽生えた違和感を放置しなかった。「見る側」から「つくる側」へ。デザインを学び直し、ONでUIの実務へ踏み出す。現在は金融領域のUI/デザインシステムに携わりながら、次の一歩を静かに準備している。選び直すたびに輪郭はくっきりする——この先の景色も、きっとそうだ。

PRを経て辿り着いた答えは「自分が“作る側”へ」
社会人としてのスタートはPR会社だった。プランナーとして、クライアント商品の魅力を“メディアが扱いやすい形”へと翻訳する企画づくりに取り組む。広告のように一方向へ押し出すのではなく、生活者の共感を介して受け入れてもらうーーそのプロセスに惹かれて選んだ最初の職種だった。
「インターンに行く中で、PRは“伝える”より“共感してもらう”設計が、広告とは違うと知ったんです。そこに面白さを感じて、PR業界を志望するようになりました」
はたらく中で、机上で組み立てた企画がどこまで現実に刺さるのか。その手応えを確かめたい思いも強まっていく。2社目は、同じPR業界ながらも、テレビ局などを回るメディアプロモーターの業務に従事。現場の担当者に直接ヒアリングし、どんな要素なら“番組の枠に入りやすいか”を探りながら、企画の実装可能性を肌で測る日々が続いた。
「実際に会って話を聞くと、何が取り上げやすいのかが具体的になります。足で稼いだ感覚は、自分の中の仮説をだいぶ現実に近づけてくれました」

計3年、上流(企画)と最前線(プロモート)を往復し、PRの循環を一通り体感した。ただ同時に、机上と現場をつないでもなお、自分の手で“形”にできないもどかしさも残る。ビジュアルの力で、伝わり方そのものを設計してみたいーーそんな欲求が、次の一歩を促した。
「PR会社時代、広告代理店さんとご一緒することが多くて、何かを世に伝える時って結局ビジュアルに惹きつけられる瞬間があるんですよね。打ち合わせを重ねるうちに“それを作る側”なら最終的に消費者のもとに届けられると感じて。ちょうどコロナで『手に職をつけたい』という思いも強くなり、基礎からデザインを学ぼうと決めました」

デザイナー未経験、現実は甘くない――80社に応募した日々
専門学校に入りポスターやWebの基礎を学び、ポートフォリオを整えて転職活動へ。ところが、実務未経験の壁は厚い。応募は約80社に及んだが、先へ進めるのはごくわずか。“現場”の距離の長さを実感する。
「自信作だと思って出しても、なかなか通らなかったですね。だからこそ、企画の意図や検証プロセスまで伝わるように、ポートフォリオを何度も作り直しました」
そんな折に出会ったのがONだった。未経験者に向けた段階的な課題設計や、実際にステップを踏んで活躍している事例が、単なる“人手確保”ではない育成の意思として伝わってきたという。
「“今すぐ”でなくても“こう進めば理想に到達できる”という道筋が明確でした。面接してくれた方の人柄も含めて、『ここなら挑戦できる』と腹落ちしました」

現場発の学びを未来へ——しんどい思いを抱える人の支えになる
最初の配属は、SNS運用のディレクションだった。投稿設計、アセット準備、配信管理ーー“間違えずに配信する”を徹底しながら、運用の型と段取りを身体に入れていく。
「未経験スタートでしたが、日時や体裁を崩さずに出し切ることがまずは使命。小さな精度を積み上げる感覚をここで掴みました」
数年を経て、成長実感をもう一段引き上げたいと考えたAYUMIは、ポートフォリオを作り直し、“次はUIデザイナーとして入る”を自らのマイルストーンに設定した。決まった次のプロジェクトはヘルスケア領域。高齢者向けの行動を支援するアプリで、のぞんでいたUIデザイナーの肩書をつかむ。それ以外にも、要件整理から画面設計、実装連携、時にはポスターや動画まで担う“横断”が始まった。
「チームの一員として一連の仕事を任せてもらえました。コアメンバーとして形にしていくプロセスが、純粋に楽しかったです」
裁量の大きさは、責任の大きさでもある。だが、その負荷は“サービスを丸ごと見る目”を養ってくれた。いま現在AYUMIは、証券会社のプロジェクトでUIデザインに従事している。UATでの画面検証、デザインシステムの運用・整流、複数サービス間のトンマナ統一など、“誤差を残さない”ための基盤づくりが主戦場だ。

「実装された画面が設計通りかを細かく確認して、ズレがあれば言語化して戻す。地味に見えて、体験の質を下支えする大事な工程なんです」
役割は限定的になりがちだが、統一ルールを整える仕事は、チーム全体の生産性に直結する。前プロジェクトの“丸ごと任せる”環境とは違うからこそ、別軸の学びが積み上がっている。
「裁量が広かった前の現場も大好きでした。今は“設計を守る力”や“ルールを運用する視点”が鍛えられている実感があります」
そして将来、AYUMIは「心理学とUIの交差点」に軸を置いている。前職時代に心を疲弊させてしまった経験から、大学で心理学を学ぶようになった経緯がある。メンタルヘルス領域のアプリづくりで、同じ思いをしているひとの手助けをするーーそのための基礎体力を、目の前の仕事で磨く。
「しんどさを抱える人の“毎日”に寄り添えるUIをつくりたい。だからこそ今は、細部の精度と運用の現実解に強くなっておきたいんです」
最後に、現場で信頼を獲得してきた彼女から、ONにジョインしようとする人へのメッセージをもらった。
「任された範囲だけでなく、気づいた改善は自分から提案する。仕事は与えられるだけじゃ広がらない。『ここもやらせてください』って手を挙げるほど、チャンスは戻ってくるはずです」

