やりたいことがあっても、「経験がないから」「もう遅いかもしれない」と踏み出せずにいる人は少なくない。
特にデザインのような専門職では、実績やポートフォリオの有無が自信の差になり、夢への距離をより遠く感じさせてしまうことがある。
それでも、「どうしてもやりたい」と思える気持ちが、道を切り開く原動力になることがある。AYA.KがONでデザイナーとして歩み始めたのは、そんな“強い気持ち”を手放さなかったからだった。

「好き」は消えない。遠回りの果てに見えた道
「デザイナーになりたい」
そんな密かな思いは、学生のころからずっと心の中にあった。どうすればなれるのか、その道筋はまったく分からなかったが、「好き」という気持ちだけはずっと変わらなかった。
「ものづくり自体が好き」という思いで新卒で入った雑貨屋は、POPの制作や販促物のデザインを任され、「デザインに触れる楽しさ」を垣間見る機会もあった。だが、それは本業ではなくあくまで付随業務であり、自分自身を「デザイナー」と呼ぶには、どこか後ろめたさを感じていた。
「あきらめかけたこともあったんです。未経験だし、そこから転職するにも年齢的に厳しいだろうなって。でも、やっぱりやりたかった。ずっと、心のどこかに引っかかっていたんです」
その後、転職してQA(品質保証)テスターの仕事に就いた。これまでとは異なる分野にもかかわらず、業務を通じてリーダー的なポジションを任されるようになり、「自分はもっと責任ある仕事ができるのではないか」という気持ちが芽生えはじめた。とはいえ、デザイナーを目指すには実績もスキルも足りない。そんな悩みを抱えていたとき、出会ったのがONだった。
「入社の決め手は、2つあるんです。ひとつは、面接のときのONのメンバーがフレンドリーで明るい雰囲気を持っていたこと。もうひとつは、面接でのやりとりを通じて、『ここならデザイナーを目指せそう』って思えたこと。ほかも受けていたんですけど、“デザインは後回しでエンジニア寄りの知識をつけて”っていうところが多かったんです。でもONは、デザイン課題やコーディング課題が分かれていて、メンターもついていて……迷ったときに相談できる仕組みが魅力的でした」

強い思いは「課題を終わらせるスピード」にも現れた
実績もポートフォリオもない分、挑戦の場である課題には、“人生かかってる”くらいの気持ちで本気を出した。
「30歳になる節目だったのもあって、“もう最後だ”くらいの覚悟で取り組みました。課題をもらって、すぐ提出して、『早く次を!』ぐらいの意気込みで(笑)。自分のやりたいことに、今向き合わないでいつやるんだっていう気持ちで、自分の全力を注ぎ込みました」
入社後最初に担当したのは、前職と同じQAの業務だった。慣れた分野とはいえ、環境が変われば求められる視点も異なる。そんな中で、着実に信頼を積み重ねていった。そして1年数ヶ月ほど経った頃、カーナビの画面デザインを手がけるプロジェクトにアサイン。これまでとは違う、新しい領域に挑戦することになったのだ。
「最初は驚きました。『私でも知ってる有名な会社だ……』って(笑)。もちろん、サポートもありましたし、最初は部分的な作業からでしたけど、現場で実際にUIを触るなかで、“あ、やれてる”って実感できたのがすごく大きかったです」

そして現在は、証券会社のプロジェクトに携わっている。画面遷移を整理したり、ユーザーの導線を見直したり。見た目の美しさだけではなく、使いやすさを徹底的に追求する。課題を解決するためのデザインに、いつにも増してやりがいを感じているという。
「業務的にも、これまでの経験を応用できるようになってきました。たとえば、QAテスター時代に培った“論理的にものごとを組み立てる力”や、リーダーとして進行を管理してきた視点が、今のデザイン業務にも活きていると感じています。過去に作られたものを見たり、周囲の動きを見ながら、臨機応変に対応しています」
もちろんプロジェクトを通じて苦労したこと、プロとして求められる気づきもあったという。
「実務では、たった数ピクセルの違いでもUI全体のバランスに影響が出てしまうんです。感覚で“これでいいかな”と進めてしまうと、後々大きな修正が必要になることもあるので、少しでも違和感があれば、自分の考えを持ったうえで、必ず相談するようにしています」

「働く」をポジティブに捉え直す
ONでの仕事を通して、「働くこと」に対する意識も大きく変わったという。昔は「働くってしんどいな」と思った時期もあった。だが、「人生の1/3が仕事なら、その時間を“嫌なもの”として過ごすのはもったいない」と、今では感じるようになった。AYAは、 自身の性格についてこう語る。
「とりあえずやってみるっていう、“直感で動く”タイプなんです。ONを選んだときも、まさにそんな感じでしたし、これまでの直感は全部間違ってなかったと思います」
自分の関わった画面が世に出るという体験は、想像以上の喜びとやりがいをもたらしてくれる。あの瞬間の高揚感を今もはっきりと覚えている。
「自分が携わった画面が実際に世の中に出たとき、いろんな人に見られるんだと思うと、本当にうれしかったです。未経験からスタートした自分が関われたことに、やりがいを感じました」

未経験でデザイナーを目指すことは、決して簡単ではない。だが、AYAは振り返る。
「私もポートフォリオがほとんどない状態からのスタートでした。不安はたくさんありましたが、それでも課題や面接を通じて、伝えたいことを素直にぶつけました。その姿勢が評価されて、道が開けたんだと思います」
これからONを目指す人たちに向けて、AYAはまっすぐな言葉でエールを送る。
「あきらめなければ、きっと道は開けると思います。やりたい気持ちがあれば、ぜひ挑戦してほしいです」
働くことに前向きであること。変化を恐れず、飛び込んでいくこと。AYAの話からは、そんな芯の強さが自然とにじみ出ていた。
